鯉冥士の物語 #100 最終回
鯉冥を観察した第三者とは誰か。言い換えれば現記(うつき)の作者である。ところで本稿は、今回の括りで百回目になる。起文した頃からの予定では、百回目が最終回だ。予定通りに括ることにする。これからが「面白くなりそうなのに」と思ったかもしれないが「鯉冥士の物語」は「小説女仙経」の副読本である。女仙経に登場する唐女「鯉冥士の生立ち」を語ったものだ。よって「小説女仙経」を更に深山歩すれば楽しんでいただける。深山歩とは「その世界へ入り込む」と云う意味で使う言葉である。そこで最終回の締めだが、二つ在る。一つは葛野王と鯉冥士の出逢い。つまり、ある冬の出来事である。場所は現在の「藤ヶ崎龍神社」が座する辺り。葛野王が湖水に向かって歩く老婆を見る。まさか入水するのではと思い、葛野王は走り寄った。老婆は水辺で立ち止まり、振り返った。老婆は葛野王の様子を、目を丸くして見つめたが、走り寄った葛野王は勢い余って老婆に当たる。そしてそのまま二人は転倒する。無理やり作ったような情景であるが、これは「現記」の一節である。ならば「現記」の作者は是を観ていたのか。ここで二つ目の締め。一匹の猫が観ていた。その猫は数カ月前から葛野王の傍に居た。
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