冷花伝 #016 尊霊界の危機

尊霊界に居るのは人霊神だけではない。上の神界から降りてきた神々も居られる。此処まで云えば察しがつくと思うが、尊霊界には概ね、二(ふた)通りの経歴がある。一つ目は繰糸落(そうしらく)、二つ目は引糸登(いんしとう)。一つ目の「繰糸落」は上の神界から落ちて来た神が形成した界。二つ目の「引糸登」は人間が昇界して形成した界。何れも形成時空は人間界の隣に存在する。それで「隣景(りんけい)」と呼ぶことが多い。ところで「隣景」と「人間界」とは縛力が遥かに違う。「人間界」に対して「隣景」の縛力は弱い。だから空間構成は「神霊界」の性質を持っている。そして実際に住している神々は、殆どが人間界から登った方々である。つまり人霊神なのである。ここに界滅の要素が在る。難しい理屈を言いかけてしまったが、それには徐々に慣れてもらうとして、赤子の冷花を見つめてみよう。尊霊界では常に騒がれているが、親に護られている赤子は普通に可愛い子である。赤子は討論をしないから普通に観えるとも言えるが、冷花の特殊性が観え始めるのは、最初の誕生日を迎えた頃からだった。その時、末目彦は大龍神を目撃した。「これで危機から脱出出来るかもしれない」と、嗜乃津では多くの尊霊が希望を抱いた。次の日、末目彦は水壁(みずかべ)を渡って菜田(なた)へ旅立った。水壁とは今の瀬戸内海のことだが、尊霊界の構造からして其処を渡るのは、大業だったのだ。

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