冷花伝 #019 乳呑児
此処で少し、尊霊界の記録から離れてみる。親の目から見る冷花の語りだ。健康な赤子で母乳も美味しそうに呑む。母親の乳房も乳を豊富に突出していた。謎の仙女、星名女に倣ったわけではないが、甲子(かし)は授乳後、冷花の口元を見つめるようになっていた。そして「母には何も分かりませぬが、御前は大切な事をする為に生まれてきたのですね」と言うのが口癖になっていた。それを言うと返事をするかのように口が動く。生後七カ月の頃になって、返事の口が喋っているように見え始めた。何かしらの発声は普通の赤子と同じであるが、明らかに母の口癖に反応するのである。父は「魂が何かを伝えようとしているのかもしれない」と考えた。それからは父も熱心に冷花の口元を観察するようになった。ある時「おりめ、おりめ、たむろめ」と言っているように感じた。当地の喋り癖で「折り目」と云うのは「目を閉じる」ことを意味し、繰り返すのは「そうしなさい」の綴りになる。「たむろめ」は二通りに解釈が出来る。先ずは「田室目」で、目(もく)を書く。もう一つは「田室女」で女(おんな)を書くのである。「田室」は子宮のことで、目(もく)の「田室目」なら「子宮の様子」と訳せる。女(おんな)の「田室女」なら妊婦と云う意味になる。前者なら「目を閉じて子宮の様子が分かります」となる。後者なら「目を閉じて妊娠中のことを思いなさい」と云う意味になる。両親とも揃って後者だと思った。そこで妊娠中の出来事を、細かく思い出してみた。
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