冷花伝 #023 昴女の扉
為津(なしず)村の汝我(じょが)を思い出してみよう。占星術師が徳を積んで、尊霊になった者だ。昴女の、噂を起こした元処(もとしょ)の一処(ひととこ)でもある。汝我が村人の尊敬を深くしたのは、雨乞をしてからであった。一度(ひとたび)の雨乞なら紛(まぐ)れもある。ところが汝我は、四度(よたび)の雨乞を成した。但しここで言いたいのは、汝我の能力ではない。汝我の祈りに応えてくれた龍神についてだ。密教経典には「雨を降(ふ)らす龍神」の記述がある。そして知っておいて欲しいのは、龍神と雨を結びつけてはならないことだ。人間に専門職があって、人其々に得手不得手があるように、雨を降らせる龍神は意外と少ない。誤解される理由としては「龍神が動くと天気が左右される」からだと思われる。どういうことかと云うと、龍神が動くと天気に影響があるだけなのだ。「雨を降らせる」或いは「雨を止ませる」ような特定した技は、それに特化した龍神しか出来ない。更に詳しく云うと、棲息域による影響もある。天候を最も左右するのは隣景。但し隣景だけではエネルギーが足りない。そこで隣景の上から龍神が来る。その龍神は尊霊の祈りに応える象(かたち)で現れる。数字で云うならば十二階層の龍神である。要するに、十二階層に棲息する龍神が雨乞本尊に適しているのである。此処まで話したところで述べておくが、積龍神は雨乞とは無関係である。汝我の祈りに応えたのは追蛇女(おだめ)龍神と云う方だ。追蛇女の棲息域は十二階層だが、出魂界は九階層に在る。冷花が十三歳になれば頻繁に現れる龍神なので、名を記憶しておいていただきたい。
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