冷花伝 #027 帥升の経歴
冉族の舟会(ふなえ)と冷花が語り合った結果、舟会は冷花が昴女であると益々思い込んだ。ところが冷花は、自分は昴女ではないと確信を得た。この正反対の結思(ゆいし)は奇妙に思うかもしれないが、ここに至った理由は判然としている。答えは、先程述べた「帥升(すいしょう)に関する五伝承」にある。舟会の頭に在るのは、冉族の伝承。そして冷花が母から聞かされてきたのは浮気伝によるものだった。つまり炉味に出現した芽込羅(めこめら)が、冷花にとっての昴女なのである。それから、作者が王士の伝承を採用する理由だが、王士尊霊界には二(ふた)つの妖精界が締縛されているからだ。その一(ひと)つには覚是頌(かくぜしょう)と云う記録が保管されている。著者は仙女の伊那岐女(いなきめ)で、この伊那岐女こそが、帥升に関する五伝承全ての既述に一致する存在なのである。昴女の言葉「お姉様に言われて此処に来ました」の「お姉様」である。但し其の「お姉様」の意味は、姉妹ではない。だいいち、昴女と伊那岐女は住む世界が違う。昴女は上の神界から来た。そして伊那岐女は昇仙して、尊霊よりも一階層上の神霊に成った。階層を数字で云えば、昴女は第一階層が生存界。伊那岐女は、第十二階層に留まっている。昴女は目的があって人間界に降りてきたが、人間界は縛力が強くて上手く入れない。そこで第十二階層に居る神仙に意見を求めたと云う訳だ。覚是頌が書かれたのは西暦150年あたりだと思われるが、保管場所が妖精界になった理由は別の機会に述べる。覚是頌に依れば「帥升は渡来仙女の孫」と云うことになっていて、其の渡来仙女の里は遥東黄(ようとうき)となっている。遥東黄とは現在のイラク周辺だ。黄はアフガニスタンのことなので、黄泉国(よみのくに)の遥か東に位置する。因みに作者の設定では「黄泉国は現在のアフガニスタン」であることを覚えておいて欲しい。東は太陽が昇る方位なので、天照族の勢力地。要するにメソポタミア地域のことだ。メソポタミアをルーツとする帥升が、神武天皇になった。そして、後に流決された日本国神話を「天照を中心に組み立てたこと」に、納得が出来る。
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