冷花伝 #039 悪路の怪音
それでは音象詩の一節を紹介する。
音象詩 二章「連妖の弓鳴り」
嗜乃津(たしなず)の尊霊に面白き者が居て、恐らく子孫に昴女を迎えるらしき伝えがある。名を末目彦と云うが、其の昴女と覚(おぼ)しき女を出生から追っていた。名は冷花。胎児からの通架を狙い付(ふ)して遣(や)るも、的(まと)を定めておる。星名は背布龍(せめりゅう)に引かれ水壁から城島を辿った。水壁の内には連妖(れんよう)が纏(まと)わりて界衝(かいしょう)を導く。是、尊霊界壊滅の恐れありと申すに、背布龍は連妖の弓鳴りを聞く。弓鳴りは怪音なりて納音(なっちん)を剥がす。よって尊霊界の危機と言うは末目彦の恐れ也。弓鳴りは城島の近隣に高く響き、城島に中たりて鋭き溝を成す。そして島淵(とうえん)から戯岸(ざれぎし)に上がる。戯岸は嘗(かつ)て桜巫(さくらみこ)の禊場(みそぎば)故に振(ぶれ)を和して吸う。依りて城島は無事なるも溝は残りて醜垣(しゅうえん)を造る。其の醜垣に住みし妖は自らを尊霊と思い、親の生前を我と云う。然して末目彦の恐れは積龍神の指手を得、菜田の文刈(もんかり)蘇支(そし)の暦法を用いて図り、背布龍に所作を与えた。法は尾にて連妖を断ち切り、水壁際の揺れを解して一年を経て効を成した。
この音象詩の二章では、嗜乃津尊霊界が救われた経緯を述べている。結末を知れば簡単に救われたように見えるが、其の実には、末目彦の難行が隠されている。
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