冷花伝 #043 目利の意味
冷花の生きた時代では、飛仙女を見る機会は普通にあった。と云っても、再々ある訳ではない。父も目撃経験はある。母は何度も観ている。恐らく冷花は、十人以上の人から「飛翔する仙人」の話を聞いていたはずだ。それで冷花は興味津々であった。だから「飛行を見せてあげる」と、星名女が承諾したことで、機嫌が良くなったのは当然である。ところで飛行様(ひこうよう)には概ね二様(よう)ある。一様は速さを重要視すること。要するに移動手段であるが、麻姑仙女が最速なのは有名だ。もう一様は飛行舞(まい)である。星名女の師である龍子舞(ろこまい)は、空中に静止する時間が長い。それは、龍神を操る為だと伝えられている。龍子舞が操龍仙女と云われる所以であるが、弟子の星名は旋律に乗って舞う。師から伝授された「鎮星之舞(ちんせいのまい)」である。鎮星とは土星のことで、太陽との掛け合いで「納音(なっちん)」を奏でる。納音には丗様(さんじゅうよう)があって、其々が五行を発する鍾(しょう)の役割を担う。そして鍾を打つのが十種の光棒(こうぼう)である。光棒とは太陽が齎(もたら)す十干(じっかん)のことで「光棒を持って舞う」主に日干を使って舞を選ぶ、よって「十日舞(とおかまい)」と云う。その飛行舞を観て、冷花が大喜びしたのは言うまでもないことだ。そして別れ際に「目利って何(なに)」と質問をした。星名女は畏まって「尊霊界の言葉でね、龍神を従えている相手に云う尊称です」と答えた。冷花は頷いて会釈した。星名女はその様子を観て「この子、やはり目利だな」と呟いた。
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