冷花伝 #044 守護龍を招く

「目利」の話が出たところで、用語解説をしておこう。星名女に聞かれて思いだした冷花だが、実は何度も聞いている。冷花に語りかけてくる多くの尊霊が口にしていたのだ。それは尊霊界で使う呪文のようなもので、古代印度語に似ているが出処は分からない。正確には「目利他八太(めりたやーた)」と云う。仙町録によれば「目利」が龍神で「八太」が法(ほう)とか術(じゅつ)。「他」は、日本語の「の」に相当する。文法の品詞なら「格助詞」である。意訳すると「龍神の術」だが、簡単な構成であるから分明だ。仙町録には「村に雨が降らぬ季は、龍神を招いて潤いを願うが良い。願文奏上の前後に目利他八太と発するべし。若し龍神を抱える人あれば、是(これ)を以って尊称に語る。幼児なれば、目利と短く掛ければ何かしら応じる」と書かれている。興味深いのは、尊霊が人間を通じて龍神を招くという機序である。尊霊界と人間界は隣り合わせなので、縛力の強い人體を社(やしろ)に見立てているようだ。人の魂には龍神族を出処とする者も存在する故に、そのような作法が有ると思われる。ところで星名女にとっては、尊霊が冷花を「どのように捉えているか」を知りたかったのである。若しも冷花が昴女だったら、和魂(にぎみたま)の働きが強い。星名女の考えは分からないが、和魂の強い者との親密を願っていたように思える。ここで再度、念を押しておくが、尊霊方も星名女も、勘違いしていることがある。それは昴女の定義である。昴女は人間として生まれて来るのではなく、神界から人間界にやって来る。もちろん言葉の使い方には色々ある。しかし冷花伝の中では、此の定義が本物の昴女である。因みに昴女の本神名は「天乃尺法(あめのさくのり)」と云う。

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