冷花伝 #046 怖い女

冷花十歳の卯月16日、蘇支(そし)からの話があって早速、積(つも)龍神との通架(つうか)が始まった。実際の会話では、一々(いちいち)通架を挟むのだが、作文の短縮を図る為、積龍神と冷花が直接話したかのように記(しる)しておく。先ずは冷花の方から「龍神様が子供の私に何(なん)の用があるの」と切り出した。龍神は的確に「子供の今に話しておかねばならぬことだ。御前(おまえ)が大人になる前に出会わねばならぬ人が居るから、告げにきたのだ」冷花は素直に聞いたが、ふと思ったのか「それは大人なの」と不思議そうに言った。冷花は村の子供たちと仲良く遊んでいるし、皆からも好かれている。ところが最近、話が合わなくなってきたのである。冷花には、普通は見えないものが見える。子供どうしでは其れを語れない。母から「話さないように」と、強いられているからだ。もちろん相手が大人でも云えることだが、子供よりは大人の方が話しやすいはずだ。それで相手が、大人かどうかを聞いた訳だ。龍神は冷花の気持を見透かしたかのように「相手は御前よりも十一年早く生まれておる。しかも尊霊とも話が出来る」と言ってくれた。冷花は嬉しくなって「いつ会うの」と待ち遠しいとばかりに返した。そして「十七歳の辰月である」との言葉に、やや意気消沈したかのように黙ってしまった。龍神は其れを察したのか「城島(きじま)に住む仙女と遭っているではないか。あの舟会(ふなえ)は二百歳くらいの大人(おとな)だ」と宥(なだ)めるかのような念積に乗せて話した。とうぜん周りに大人は沢山いる。だが冷花にしてみれば、話せる友達としての大人を描(えが)いていたわけだ。しかし龍神の気持が通じたのか、機嫌を直して話し始めた。そして「十七歳に遭う人って、怖い」と冗談のつもりで聞いたら、意外な返事だった。「そうだ怖い女だ」と云われた。やや怯(ひる)みかけた冷花だったが、気を取り直して言った「私と、どっちが怖い」すると更に意外な言葉が返ってきた「冷花のほうが怖い」その言葉に冷花は流石(さすが)に驚いた。「どうして冷花が怖いの」と、今度は子供らしい口調になった。近くに居た甲子は冷花の様子を心配して。「龍神様の話が難しいの」と割り込んできた。もちろん母には龍神との会話は聞こえない。しかし甲子の割り込みで空気は変わった。冷花はもう一度気を取り直して「どうして冷花が怖いの。誰が冷花を怖がるの」と改めて質問をした。それに対して龍神は丁寧に「御前を怖がるのは尊霊だ。御前が怖いのは尊霊を怖がらないからだ」と教えてくれた。実際の話は長い語りであるが、ここでは要約に留めておく。そして冷花は落ち着いて「十七歳になるのが楽しみ」と笑顔になった。その後(あと)、積龍神は「暦神の結束」について詳しく教えてくれた。更に其の目的が「富士尊霊界」の立て直しであること。そして其の元が「黄泉国の風」であることを語った。その内容は何(いず)れ、冷花の口から語ってもらう。

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