冷花伝 #048 優しい人
冷花十歳の卯月23日、冷花から蘇支に御願いをした。積(つも)龍神との通架(つうか)を望んだのだ。先ず、前置きの御決まりを述べておく。実際の会話では、一々(いちいち)通架を挟むのだが、此処では作文の短縮を図る為、積龍神と冷花が直接話したかのように記(しる)してある。初回と同じく、先ずは冷花から切り出した。「冷花が怖い女って云うのは、私が尊霊様を怖がらないから。って言ってましたよね。尊霊様を怖がったら、優しい人になれるの。村の皆(みんな)からは優しいって言われてる。それから十七歳に会える人は、冷花よりも優しいのでしょ。でも怖いって言ってたでしょ。だから冷花は十七歳になる前に、その人よりも優しい人に鳴っておきたいの。どうすれが良(い)いかな」今回の口調は子供らしく可愛いかった。龍神は最初、冷花が何を言っているのか理解出来なかった。それで暫く無言だったが、言わんとしている意味を推測して、緩やかに語り始めた。「冷花が怖い女でなくなったら、大事な使命を果たせない。だから怖いままでないといけないのだ。尊霊は神の立場で人間と同じ想いを持っている。人間の気持ちを理解してくれる神故に、連妖を強くしてしまう。それが尊霊界を不安定にするのだ。でも冷花は、そんな尊霊に物申すことが出来るのだ。だから、そのままであって欲しいのだ」冷花は変な顔をして「思ったことを伝えれば良(い)いんでしょ」と返した。これで龍神は正確に理解して冷花に言った「相手が神だったら、普通は自分の考えを下げてしまうのだ。神だから偉いと思い込んでしまっているからな」その言葉で冷花はフト思った。「そうだ、人間同士と、人間と神様では違うんだ。冷花は他(ほか)の人間に優しくすれば良(い)い。神様に怖がられても構わない」と納得したようだった。そこで積龍神は「とにかく冷花は、昔も今も、そのままで良(よ)い」と念を押した。その様子を観ていた母は、会話が聞こえずとも内容が理解できた。ところで通架していた蘇支だが、冷花さえ納得すれば良いのだ。と、考えていた。そして自分が質問されたら困る。とも思っていた。幸い蘇支は、質問されなかった。やはり冷花は、尊霊に怖がられているようだ。
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