冷花伝 #054 昴女への期待

この辺(へん)で主題に戻さねばならないが、前もって冷花の一生を把握しておく。審(つまび)らかな幕(まく)は各処で味わうとして、大まかな軌跡を知っておくと理解が楽である。分かり易くする為に、出生地の嗜乃津(たしなず)以外は、現代の地名で説明する。

冷花は十三歳になって、父に伴って出雲へ行く。動機は積龍神の導きであるが、出雲は父の出身地である。ここで汝我(じょが)の雨乞を思い出して欲しい。雨乞の祈りに応えたのは追蛇女(おだめ)龍神だった。作者が予告していた通り、冷花が十三歳になれば頻繁に現れる龍神である。冷花が積龍神と疎通出来たのは蘇支(そし)の御蔭であるが、蘇支は出雲には付いて行けない。所属尊霊界での仕事もあるのだが、他の尊霊界へ移動するには「乙種尊霊」の資格が必要なのだ。蘇支には其の資格がない。蘇支としては資格取得を望んでいるが、正に「高嶺の花」なのである。冷花にしても、蘇支に馴染んでいる。そこで冷花は積龍神に言った。「蘇支さんに付いてきて欲しい」蘇支は自分のことなので「冷花がその様に言っておるのですが」と恭(うやうや)しく伝えた。積龍神は其れを追蛇女龍神に伝えた。追蛇女龍神は早速、地中海のクレタ島へ飛んだ。乙種尊霊の資格取得には50年以上と厳しい条件が必要なのだが、何故か蘇支は認定を受けることが出来た。因みに追蛇女龍神は地中海を本拠地とする龍神団の所属である。地中海の島々では早くから尊霊界が整備され、ギリシャ神話のモデルに鳴っている。話を戻して、冷花は父に伴って出雲に入った。出雲では5年を過ごし、蘇支の通架によって多くの龍神と語り合えた。其の間(かん)、十七歳を迎えた冷花は、名和の地にて「怖いけれど、冷花よりも優しい女」に出逢う。其の優しい女の名は「芳雅(ほうが)」冷花とは意気投合して、中の良い友人どうしになった。冷花十八歳の午月、芳雅は能登半島へ向かう。当然のことながら、冷花も同行した。能登で過ごしたのは5年間だったが、その最後の年、芳雅は導士になった。導士になった芳雅は富士山の麓に向かい、やがて御殿場に住み着いた。冷花は其処で芳雅に弟子入して飛仙女になった。そして苦労はしたが、昴女に出逢う。

かなり大雑把(おおざっぱ)な説明ではあったが、これを押さえておくと、今後の理解が容易になる。よって熟読を御勧めする。

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