重要な尊霊と云えば、筆頭に「蘇支」を挙げる読者も居(お)られるだろう。蘇支は、冷花と積龍神との通架役だ。出雲にも随行している。その後も冷花に付き纏い「今まで有難う」と、冷花から三度(みたび)も「さよなら」を言われたが、去らなかった。理由は何故か言わない。しかし冷花の師匠には見破られている。但し芳雅の語りは先になる。それで読者には辛抱強く待っていただくことにして、蘇支が文刈(もんかり)だったことを思い出して欲しい。文刈は歴史学者のようなものだが公職の文官ではないことも述べてある。さて本段は、そこのところを詳しく語らなければならない。そこで先ず、尊霊界の経歴には概ね二(ふた)通りあったことを思い出して欲しい。一つ目は繰糸落(そうしらく)、上の神界から落ちて来た神が形成した界である。二つ目は引糸登(いんしとう)、人間が昇界して形成した界である。此処で読者がシッカリ覚えなければならないのが、菜田の尊霊界は繰糸落だったこと。つまり以前は積龍神が屯(たむろ)する階層と同じ「上神界」だったのである。そして重要なのが「落ちてきたからには、念積様は人間的になっている」と云う事実だ。ところが「上の神界から来た」ことだけは事実なので、其れを振りかざす。そこで冷花に「菜田には幽霊が沢山居って威張っている」と言われるのである。現実は威張るどころでは無い。人間界の知識がないから、尊霊としては未熟なのだ。だから文官には就けないのである。よって蘇支は文刈なのだ。ところが積龍神にしてみれば、元は同階層の神なので意思疎通が容易(たやす)い。それで冷花との通架役に選んだのである。それが冷花十歳の卯月、彼女に一大転機を齎(もたら)したのだ。
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