冷花伝 #066 救われる成行

読者の視点では、嗜乃津(たしなず)尊霊界の危機も脱している。しかも背布龍(せめりゅう)の降臨によって、簡単に解決したような印象を持ってはいないだろうか。末目彦の難行を忘れかけてはいないだろうか。本段では其れを思い出して、尊霊界が救われた成行を回顧してみたい。先ず「危機回避の希望」を齎したのは冷花である。昴女の噂が、尊霊方(がた)の拠り所となって勇気ある行動を誘発した。何故なら、過去に多くの尊霊界が壊れているのである。第五の事例を辿ると、地震や火山噴火で集落が消えるのは珍しくない。それと同じで、怪音が激しくなった尊霊界では、他界に避難するのが定石なのだ。つまり、危機を脱した尊霊界は珍しい。回避されたとしても「運が良かった」とでも云うべき自然現象なのだ。嗜乃津尊霊界が異例なのは、尊霊と人間の協力によって得た成果だからだ。今までの文をを再読していただければ納得ができるはずだ。これを「四五結束」と云う。四は神界、五は人間界のことであるから、人間界と神界の結束なのである。連妖の生立ちは、主に人間の想い。そして尊霊の弱みは、人間のように想いを固める神様である。だから嗜乃津尊霊界は、自分たちが齎した災害を、自分たちの努力で回避したのである。もちろん背布龍は尊霊界よりも上の神界に居る。「四五結束」の四は、高神界も含まれる。もし末目彦らの努力がなければ、背布龍は「連妖の、どの部分を断ち切ればよいのか」分からなかったのである。ところで背布龍を連れてきたのは星名女である。彼女のような仙女は、人間と尊霊の両帯(りょうたい)を占(し)めている。ところで今、物足りなさを感じた読者が居たのではないだろうか。実は、末目彦が難行を終えて帰還した。その件(くだり)は未だ語っていないからだ。

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