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鯉冥師の物語 #47「五つの閃き」(JT 07:26/02/04/2023 三蔵)

夜毬の夢には謎が多かった。少女の鯉冥は、その謎解きで頭が一杯だった。ところが十七歳の夏、五つの閃きを得た。一羅、眼前の事態は念の流れ。二里、世界の安定は天地の意識。三流、過去は未来が担う。四礼、今が在るのは感触に依る。五呂、現と夢が相まって縛される。 JT 07:26/02/04/2023 三蔵

鯉冥師の物語 #46「鯉冥の杭」(JT 07:37/20/03/2023 三蔵)

黄色い髪の女性は「名乗らなかった」養筒をするから官職かと思っていたが、そうでもない。ある日「師の教えは私を変えました。それなのに存在が感じられません。師は何処から来られたのですか」と鯉冥は聞いた。すると「居ますよ。あなたの自時杭の左遷部分に」との言葉。 JT 07:37/20/03/2023 三蔵 解説(鯉冥師の物語 #46)時杭とは「歴史を形成する上での基準位」なので、自時杭は誕生日だと思えば良い。誕生日の不明者は「自分が生まれたであろう年に起こった出来事」を自時杭にすることが出来る。一般に「誕生日は他人の言葉を信用するしかないから」意外に「あやふや」なものだと、捉えられる。 JT 09:36/20/03/2023 三蔵

鯉冥師の物語 #45「黄色い波」(JT 17:06/12/03/2023 三蔵)

21歳の夏、黄色い髪の女性に遭った。先祖が暦の大家だと自称していたが、確かに多くを知っている。鯉冥の質問にも分かりやすく答えてくれた。高積(たかつみ)に住んで養筒に勤しんでいるらしいが、一刻ほど話しているうち気付いた。夜毬の夢に出て来なかった人だったのだ。 JT 17:06/12/03/2023  解説(鯉冥師の物語 #45)高積は「山の中腹」と云う意味であるが、ここでは長江の上流を指していると思われる。「黄色い波」とは黄仙女(諸葛孔明の妻)の学説。神相学派では「仙昇戯水譚外伝」として伝えているが、正史には全く登場しない。「黄い髪の女性」は鯉冥士が遁甲を深く学んだ師とされている。 JT 19:19/12/03/2023 三蔵 解説(養筒)ここでの筒(とう)は天文観測の道具。望遠鏡のようなレンズは無くても、筒を覗けば視野を特定できる。そして狙いを着けた星を観測する。養(よう)は作って行くことなので、建設すること。よって、黄色い髪の女性は「ある高積に天文観測所を建設していた」その期間に鯉冥士を訪れたのである。 JT 22:58/12/03/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #044「置閏の閃」(JT 00:49/03/03/2023 三蔵)

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何歳の頃かは意識していないが、鯉冥の日課は星を数えることだった。恐らく三年以上、毎夜の出来事。そして「日によって星の数が違っている期間」を発見した。それはまるで呼吸を整えているかのようだ。大きさの異なる二輪があって、年に二回夫々が揺さぶり合うのだ。 JT 00:49/03/03/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #043「父の星」(JT 01:46/01/03/2023 三蔵)

夜毬が聞いた転児の言葉「星はたくさん在るのだよ。三百以上まで数えたのだが、それからは上手くいかないんだ」これは夢の中、つまり父の魂が語っている。現(うつつ)の父も三百以上を数えている。転児が生まれた頃から星座の概念は伝えられていて、星は既に千以上在った。 JT 01:46/01/03/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #042「母の星」(JT 13:24/21/02/2023 三蔵)

刧初も星を知っている。散りばめられた無数の点を観ていた。転児から求婚された時も、星を眺めながらだった。転児は天文学者だから、常に星の話をする。「星は無数に在るね。幾つあるか分からないからこそ、魅せられるんだ」ある日、刧初は星を数え始めた。六十しかない。 JT 13:24/21/02/2023 三蔵 ※先日投稿した通し番号も今回も「#042」ですが、エックス(当時はTwitter)投稿時の原文そのままで通し番号の修正は行っていません。

鯉冥士の物語 #042「親子対談」(JT 12:53/18/02/2023 三蔵)

鯉冥が十八歳の誕生日、本格的な天文会議を行った。先ずは「星の数について」刧初(母)が数えた星は六十、鯉冥は百二十観える。転児(父)にとっては数えきれない数が在る。刧初(ごうしょ)は何度も数え直した。鯉冥は最初から知っていた。転児(てんこ)は今も観察中である。 JT 12:53/18/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #041「十歳杭」(JT 03:27/17/02/2023 三蔵)

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 鯉冥が夜毬と呼ばれていたのは赤ちゃんの時だが、本人にしてみれば、夜毬として一生は既に経験済みなのだ。その夜毬と鯉冥の「架け橋となる杭」が十歳に出来上がった。つまり「寝ている十歳の鯉冥」が、現と魂が交砂している現場だと云える。そして其処で星の数を知った。 JT 03:27/17/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #040「天文砂」(JT 18:27/16/02/2023 三蔵)

父は子供の頃から「星の数」を数えていて、今も数え続けている。「どうして、そんなに、数えられるの」と、十歳の鯉冥は聞いた。「たくさん在るからだよ。それに増えてくる」夜毬の記憶では「三百以上は在るよ」と、父は言っていた。そして十三歳、沢山の星が見えてきた。 JT 18:27/16/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #039「天文里」(JT 22:00/15/02/2023 三蔵)

おそらく十歳の時、夜空の星を数えていた。母から「幾つ在った」と聞かれた。数え終わっていないけれど「百二十在った」と鯉冥は答えた。「ずいぶん沢山在ったのね」と微笑んだ母は、子供の頃の自分を回顧して「私は何度数えても六十しか見つけられなかったわ」と呟いた。 JT 22:00/15/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #038「夜毬の夢記 其之十八」(JT 09:49/11/02/2023 三蔵)

人生は「夢と現」どちらが本当なのだろう。それは鯉冥の課題だったが、夜毬は既に結論を出していた。長い時間を生きる方の自分が、本当の自分だ。つまり「夢の自分」が在って「現の自分」が現れる。そして天円の息を図ることで、現を実なると想えるのである。 JT 09:49/11/02/2023 三蔵 解説(鯉冥士の物語 #038)人間として生きているのは短い。ところが魂が生きている時間は長い。魂として生きている自分が時折、短命の人間として現れる。だから「本当の自分は魂」の方である。しかし天文現象を受け止めると、人間として生きる現実の意義を実感できる。 それが夜毬の出していた結論だ。 JT 10:52/11/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #037「夜毬の夢記 其之十七」(JT 09:56/07/02/2023 三蔵)

現(うつつ)を抜(ぬ)かす。夜毬の夢では其れを抜かす。操車が言うには「魂の世界は幻が希薄です。精神の営みは、殆どが理に叶います。相性は性様によって鳴るのだから。同類は速やかに集いて、異類は常に対衝を保つのです」魂は事実を尊び、幻には犯されない。 JT 09:56/07/02/2023 三蔵 解説(鯉冥士の物語 #035~#037)我々の生存する宇宙を「現(うつつ)」、夜毬の夢は魂の世界なので「夢→神界」として語られている。神界では一年三百六十日と設定されているが、現では三百六十日として現せない。その隙間を「幻」と表現して、天文学者は数技(数学)を使って「現の幻」を克服してきた。 JT 14:51/07/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #036「夜毬の夢記 其之十六」(JT 03:24/07/02/2023 三蔵)

現(うつつ)が抜(ぬ)ける。鯉冥の現では其れが抜けている。操車が言うには「星の営みは、宇宙の事実として観なければなりません。でも腑に落ちないことばかりなのです。其処で、自然が身に付けたのが幻なのです」そして鯉冥が身に付けたのは数技での閏だった。 JT 03:24/07/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #035「夜毬の夢記 其之十五」(JT 02:38/07/02/2023 三蔵)

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夢(ゆめ)か現(うつつ)か幻(まぼろし)か、夜毬の夢では一年は三百六十日。鯉冥の現では三百六十五日三刻内。夜毬と鯉冥の間には「五日を食(は)み出た幻」が在(あ)る。操車が言うには「幻は綿(わた)のようなもの、水なく戯れる処です」閏の存在を遊戯と述べる。 JT 02:38/07/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #034「夜毬の夢記 其之十四」(JT 12:35/06/02/2023 三蔵)

夜毬は子供ですが、操車と話していたのは卅九歳から約五年間です。そこで学んだのは「閏(うるう)の捕らえ方」です。当時、土星の動きに気付いていた天文学者の多くは、共通の体験をしていました。其れは操車と出逢い、さらに数十年後に鯉冥士と語り合うこと。 JT 12:35/06/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #033「夜毬の夢記 其之十三」(JT 13:45/05/02/2023 三蔵)

夢か現か、操車(そうしあ)と話せば、どちらも同じです。ただ景色が違うのです。夢の景色は飛蛇が空を舞っていて、現の景色は綺麗な雲が流れています。「龍子舞に会ったのね。雲の流れは掴めないけれど、日月を被う姿は観えるわね」それが新たな始まりでした。 JT 13:45/05/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #032「夜毬の夢記 其之十二」(JT 01:09/05/02/2023 三蔵)

寝ている夜毬は四肢を大きく伸ばすことがあった。単なる身体運動ではなく、操車と会っている証だと思えば良い。現(うつつ)に迎えた操車との出逢い。それは卅九歳の春、心地好い光に向かって全身を伸ばした時。目の前に、見掛けは自分よりも年下の女が立った。 JT 01:09/05/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #031「夜毬の夢記 其之十一」(JT 05:10/03/02/2023 三蔵)

猫の行先は「優しい人の下」だと知っていました。今の龍子舞様は仙女ではなく神霊です。夢での私は、身体の殻が透けています。だから飛蛇に乗せてもらえました。飛蛇は現も夢も無口ですが、私の想いは伝わりました。地の息継ぎが飛蛇の溜息に聞こえてきます。 JT 05:10/03/02/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #030「夜毬の夢記 其之十」(JT 09:03/30/01/2023 三蔵)

猫になった加令視さんは「話をする猫」です。話さない方の加令視さんは「凄く可愛い猫」です。龍子舞の姿を観てから、鯉冥は鮮明な星を見るようになりました。夜毬が観ていた星象とが重なってきたからです。夢記は論書に移行し、やがて猫は何処かへ行きました。 JT 09:03/30/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #029「夜毬の夢記 其之九」(JT 00:46/28/01/2023 三蔵)

あの仙女は誰か、猫に聞いてみました。すると不思議なほど流暢に「大分和拭樽姫(おおわけにぎしたるひめ)が人間に産まれて仙女になったのです。仙界では龍子舞(ろこまい)と呼ばれている操蛇仙です。私は、あの方に会う為に猫になりました」と答えてくれました。 JT 00:46/28/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #028「夜毬の夢記 其之八」(JT 04:35/26/01/2023 三蔵)

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猫になった目的は「逢いたい人がいてるから」どうやら修行です。ある日、冬の終わり頃、飛蛇型雲を観ました。猫が必死で其雲に向かっています。すると仙女が現れて「猫の象になっても、人の邪悪は抜けておらぬ」と微笑んで雲を指すと、本当の飛蛇が現れました。 JT 04:35/26/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #027「夜毬の夢記 其之七」(JT 09:54/25/01/2023 三蔵)

猫になった加令視さんは暫くの間、鯉冥の家に滞在しました。ある少し暖かい日、近くに在った石に座ってこちらを見つめています。夜毬の夢中では「猫は元気に動けるが、やはり人に慣れているので窮屈だ」と言っていました。そして暫く黙り、また語り始めました。 JT 09:54/25/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #026「夜毬の夢記 其之六」(JT 01:43/22/01/2023 三蔵)

夢の記憶がなかったら、玄関に居た猫が加令視さんとは思わなかったはずです。確信を持てたのは、姿が全く同じだったから。「加令視さん」と聞いたけれど、反応は普通に猫の声。そこで鯉冥は、夢中猫との会話を思い出しました。その猫は言葉を話していたのです。 JT 01:43/22/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #025「夜毬の夢記 其之五」(JT 21:53/20/01/2023 三蔵)

三七歳の時、その秋、満月の日に加令視さんの葬儀があった。父は体調が悪く来れなかったので、母と二人だった。夜毬としては無かった経験の一つだ。出席者は百人以上(この村としては)珍しく大勢の参列だ。多くの人と語り、そして帰宅したら、玄関に猫が居た。 JT 21:53/20/01/2023 三蔵 解説(夜毬の夢記)夜毬は赤ちゃんの時、自分の一生を夢で見ました。そして大人になって現実を経験すると、夢の内容を繰り返しています。だから「普通に付ける日記」が「夢の日記」になります。ところが「夢の内容」と「現実の体験」の一部に食い違いが出てきます。その描写が「夜毬の夢記」なのです。 JT 22:31/21/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #024「夜毬の夢記 其之四」(JT 21:34/20/01/2023 三蔵)

三六歳の時、夏、ある日に加令視さんと会っていた。(もしかしたら今日から猫になったのでは)と内心思っていたが。その人は、そんな言を云わなかった。それとなく「猫、好きですか」と聞いてみたところ「怖くはないのですが、猫は苦手でね」と返ってきた。 JT 21:34/20/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #023「夜毬の夢記 其之三」(JT 21:11/20/01/2023 三蔵)

加令視さんは父の友人、夜毬にとっても身近な人である。ある日「私は猫になります」と言って姿を消した。鯉冥として逢っているのは人だから。夜毬の前から消えた人は何処へ行ったのか。その謎解きこそが、鯉冥が生涯を駆けてきた「時の秘密を開ける鍵」だった。 JT 21:11/20/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #022「夜毬の夢記 其之二」(JT 10:03/18/01/2023 三蔵)

光の速さを語る人は加令視(かれし)さん。冥士よりも十歳年上である。ある日、音と競争してみることになった。夢の中では音に勝ったはずなのに、ここでは敗けてしまった。それ以外の現実は夢と同じなのだ。そう云えば夜毬の髪括りは五歳の春まで「杣先」だった。 JT 10:03/18/01/2023 三蔵 解説「杣先(そまさき)」髪括りの一法。ポニーテールのように一つに束ねた髪の端部を二豊にして括る。三ヶ所の括りを三峰に見立てて「山」を表現する。伝説と云うことになっているが、仙人の飛行に関する話。山並みが影響して直線に飛ぶことが難しい場合には髪を杣先に括れば直線に飛行出来るとされる。 JT 12:30/18/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #021「夜毬の夢記 其之一」(JT 11:22/14/01/2023 三蔵)

廿五歳の時、鯉冥は見覚えのある人と出会った。「太陽の光はね、凄く早いのよ。声だって早いけど、比べものになりません」夜毬が見ていた夢に居た人だった。そして、その人のことを日記に書いた。以後、事有るたびに書いた。それは夜毬が観た夢の記録になった。 JT 11:22/14/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #020「光と音の面」(JT 16:52/12/01/2023 三蔵)

夜毬は子供、鯉冥は大人。表相は鯉冥が年上、そのような約束で人々は暮らしている。彼女が、夜毬でもなく鯉冥でもない境目の頃。光の尾、音の面、を観たそうだ。音は今、光は過去、そのように感じたのだが「当然のことじゃないですか」と、誰もが語ってくれたそうだ。 JT 16:52/12/01/2023 三蔵

鯉冥士の物語 #019「星象を含む」(JT 15:35/15/12/2022 三蔵)

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人間の誕生は「今」のこと。自分が世に現れて星々を含み、そして體(からだ)は成長して行く。鯉冥は云う「一生は短いように感じるけれど、私は産まれる前にも大人だった。だから誕生日が一生でもあるのです。そして里年の役割を体感しました」三百六十杭の存在である。 JT 15:35/15/12/2022 三蔵